陶齋作品 1943年(昭和18年)鵠沼(くげぬま)時代の署名のこと。
先日午後、新潟県立近代美術館へ行き、同館が収蔵される齋藤三郎作品「呉須掻落牡丹文瓶(ごすかきおとしぼたんもんびん」を拝見し撮影させて頂いた。
作品は2009年秋の同館の企画展「あふれる詩心-版画と陶芸-展」で一度見ていた。図録に1943年制作とあった。年代は拙樹下美術館で唯一欠けている鵠沼の時代である。底に記されているはずの署名がどんなものか、長く見たいと思い続けた。
当日、奥まったスペースで丁寧な学芸スタッフによってまず全体を見せて頂いた。続いて底を見るために寝かせて頂いたところ一瞥では署名が分からなかった。エッと思って目を凝らすとへりに小さな刻印風のものがある。さらに凝らすと釘で浅めに彫った署名だと分かった。
下に当館が収蔵する作品と今回拝見した署名を古い順に①~⑨まで示させて頂いた。④はこのたび撮影した彫り署名の写真をトレースしたものである。
①昭和12年秋
作品の箱に年代明記されていたので大変助かった。
一連を眺めて二三の感想を記して見たい。
●この度の作品の署名④は筆によるものとばかり思っていたので、小さな彫り署名は意外だった。
●しかしそれ以前の署名①②③を考慮すると、④の字体は自然な流れの中にある印象を受けた。
●⑤は拙父が生前に集めた青磁鉢の署名である。見慣れた戦後髙田の⑥⑦⑧⑨と異なり同定に困難を感じていた。しかし長く当家にあったので早期の髙田時代であろうと推測していた。このたびの鵠沼④から見ると連続性があり推定通りとして一応安心した(同じく彫り署名でもあり)。
●⑩は樹下美術館にある色絵魁大鉢の署名で、少々字体が風変わりだ。戦前の時代②③と幾分類似するように思われるが自信が無い。さりとてこのたびの鵠沼とも異なる。また見慣れた髙田時代の⑤⑥⑦⑧⑨とも関連させずらい。聞けば戦前と言う人もいたし、戦後という人もいる。
非常に大きくて実験的な印象が漂う興味深い作品である。予定している当館収蔵図録において唯一「年代不詳」とすることとした。
年代同定は、最初に手に入れた人か何より作者に聞くことが出来れば何でも無い事であろう。しかし後人が本などにしようとなると苦労と不安がつきまとう。
最後にこの度、新潟県立近代美術館の学芸員の方々には大変丁寧に対応していただき深く感謝しています。
お見せ頂いた呉須掻落牡丹文瓶は素晴らしく、齋藤三郎の生涯最高作品ではないかと思いました。もしかしたら古今東西における陶芸の傑作の一つかもしれませんね。樹下美術館で陶齋を飾れる幸せを感じながら帰りました。
※当花瓶の写真は樹下美術館カフェにある本「越後の陶齋 泥裏球光」と「あふれる詩心-版画と陶芸」でご覧になることが出来ます。